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生活保護は借金があっても受給可能
借金を抱えるほどに生活が困窮している場合、国の制度として設けられている生活保護を受給して、少しでも生活の質を向上することはとても重要です。
しかし、「借金を抱えていると生活保護は受給出来ないのではないか」「信用度に欠けてしまうのでは?」「受給時の審査で落とされるかも」という心配をしている方も多いでしょう。
結論から言えば、生活保護の受給にあたって借金の有無は関係ありません。生活保護の受給条件は、以下3点のみです。
- 収入や換金できるような資産がない
- 国や市区町村の手当・支援制度を利用しても最低限度の生活を送ることが困難
- 金銭的支援を頼める親族などがいない
生活保護を受給するため条件は、まず第一に収入やそれに代わる資産が一切ないということです。例えば、車や自宅などを保有していた場合は、収入がなかったとしても生活保護を受給することは出来ません。
また、金銭的に支援を頼めるような親族が近くにいないことや、児童手当、障害者手当などの制度を活用しても最低限の生活を送ることが困難だと判断された場合は、生活保護受給の審査が下ります。
繰り返しにはなりますが、借金があったとしても生活保護を受給することは可能ですのでご安心ください。
生活保護申請時に調査されること
生活保護を受給する際には、以下の項目を調査し、受給条件に当てはまっているかを判定してもらう必要があります。
・生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)
・預貯金、保険、不動産等の資産調査
・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
・就労の可能性の調査生活保護制度|厚生労働省
この調査が終わり、生活保護の受給条件に当てはまっていると判定されると、正式に生活保護の受給が開始されます。生活保護の受給中は、受給者側にも以下のような収入申告義務などがあり、長期に渡っての不正受給などが不可能な仕組みになっています。
◆ 厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費から収入(年金や就労収入等)を引いた額を保護費として毎月支給します。
◆ 生活保護の受給中は、収入の状況を毎月申告していただきます。
◆ 世帯の実態に応じて、福祉事務所のケースワーカーが年数回の訪問調査を行います。
◆ 就労の可能性のある方については、就労に向けた助言や指導を行います。生活保護制度|厚生労働省
生活保護で受け取れる金額や種類
生活保護の種類と内容としては、以下のように必要最低限の生活を送る上で不可欠なものに対し、それぞれの費用に見合った扶助を受けることが出来ます。
生活を営む上で生じる費用 | 扶助の種類 | 支給内容 |
---|---|---|
日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等) | 生活扶助 | 基準額は、 (1)食費等の個人的費用 (2)光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。 特定の世帯には加算があります。(母子加算等) |
アパート等の家賃 | 住宅扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
義務教育を受けるために必要な学用品費 | 教育扶助 | 定められた基準額を支給 |
医療サービスの費用 | 医療扶助 | 費用は直接医療機関へ支払(本人負担なし) |
介護サービスの費用 | 介護扶助 | 費用は直接介護事業者へ支払(本人負担なし) |
出産費用 | 出産扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
就労に必要な技能の修得等にかかる費用 | 生業扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
葬祭費用 | 葬祭扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
生活保護は、国民の最低限度の生活を保証する制度のため、「受給することが恥ずかしい」「肩身の狭い思いをするのでは」と思われがちですが、条件に合致していれば誰でも受給することのできる制度です。
生活苦が自身ではどうにも解消できないという場合には借金を抱えていても問題ありませんので、生活保護を受給するという選択肢を持っておきましょう。
生活保護費を借金返済にあてるのは禁止?
借金を抱えた状態で生活保護の受給を開始した場合、最低限度の生活が保証されるため生活は格段に楽になるでしょう。
そういった状態では、抱えている借金も今のうちに返済しておきたいと思われる方も少なくありません。
ただし、借金を返済しながらの生活保護受給、あるいは受給した生活保護費を借金返済に当てることはできません。理由としては、生活保護の制度趣旨として支給される費用の使い道が「最低限の生活を保証するため」に限られているからです。
生活保護制度は「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長する」ためにあると定義されています。
先述した通り、生活保護で扶助されるのは「衣・食・住」を中心としたものが基本のため、これを借金返済にあてるのはリスクでしかありません。
生活保護費を借金返済にあてても無申告ならバレない?
生活保護を受給していると、毎月の収入申告や訪問調査が行われます。ここで、借金の返済をしている事実を内緒にしていても、バレなければ問題ないのかと言われれば、全くそんなことはありません。
そもそも、生活保護行政を担当している福祉事務所は定期的に生活保護受給者の金融機関口座を調査しているため、お金の動きは福祉事務所にしっかり把握されています。
そのため、バレずに借金返済を行うことはほぼ不可能と考えてください。それよりも、借金返済の事実が明るみになった場合は、大きなペナルティーがあります。
まずは、不正受給とみなされ生活保護費の支給が打ち切り、または借金返済額をと同等の金額を生活保護費から一括徴収されます。
借金の返済額や期間などによっては、不正受給分の140%の金額を徴収<>されることもあるのです。
最悪なパターンでは、刑事告訴をされ、懲役や罰金を科されることもありますので、生活保護費を借金返済にあてることは絶対にやめてください。
生活保護受給中の新たな借金はどうなる?
キャッシングや周囲の人からお金を借りるなどした場合、生活保護受給中に新たな借金が発生するということになります。
まず、キャッシングで借りたお金は収入認定され、生活保護の受給額は減らされます。
バレずに借金をし続けることも難しく、ほとんどの場合どこかのタイミングでバレますので、絶対にやめましょう。
生活保護受給者でもカードローンでお金を借りられる?
生活保護を受給していても、保護費が足りずになお生活が困窮するということもあるでしょう。
一般的に、生活保護受給者は消費者金融などでお金を借りることは出来ません。
しかし、生活保護費を収入として申告しケースワーカーに内緒であれば、カードローンの審査さえ通れば実質お金を借りることは可能です。
カードローン専用のキャッシュカードを発行して返済をすることも出来ます。ただし、カードローンは口座からの引き落としによる返済になるので、ほぼ100%の確率でケースワーカーにバレ、不正受給とみなされた上での罰則が待っています。
そのため、お金が足りないからとカードローンに手を出すのは絶対におすすめしません。
借金が消えたり返済時効が来る方法はないの?
生活保護を受給しながら借金返済は出来ないということは分かりましたが、それでは生活保護を受給している間は借金を放置してしまうということになります。
残念ながら、生活保護を受給していればいつか時効が来て借金が消えるということはあり得ません。
生活保護受給者にも同様に借金返済の義務があり、自動的に返済義務がなくなることはないため、借入の返済義務を免除してもらうための手続きを進めることが肝心です。
生活保護受給者の借金は債務整理で解決
生活保護受給者は債務整理をすることで、借金を減額、またはゼロにすることが出来ます。
生活保護受給者の債務整理には、任意整理、個人再生、特定調停、自己破産の4つの方法があり、以下のような特徴があります。
- 任意整理、個人再生、特定調停は月々の返済額を減額できる
- 自己破産は借金の支払い義務を免除、言い換えれば借金をゼロにできる
ただし、借金を抱えながら生活保護を受給しているのであれば、弁護士からは自己破産の手続きを進められることがほとんどでしょう。
理由は、自己破産以外の手法を取ると月々の返済額を減額できるだけなので、支払いは長期に渡り、生活を圧迫することになります。
すでに生活が破綻寸前まで来ているので、長期的な支払いがそもそも現実的でないという人も多いです。そのため、生活保護を受給している場合は自己破産の手続きを取ることにより、借金を清算してしまうことが賢明です。
借金が少額でも自己破産は可能?
自己破産というと、莫大な借金を抱えた人が行うというイメージがあります。しかし、生活保護受給者の場合は借金が少額というケースも多いです。
少額だとしても借金を返済する経済的余裕がないために、僅かな借金を返済しない(できない)まま生活保護を受給するという流れになる場合が多いためです。
金額としては20万円~100万円規模という方も多くいます。この場合、確かに借金はあるものの、少額過ぎて自己破産の対象外になるのではないかと考える方もいます。
しかし、自己破産には借金の金額に上下ともに制限はありません。
イメージ通り、莫大な借金を抱えていたとしても、反対に50万以下の少額であったとしても、自己破産をすればどちらも免責対象になります。
自己破産のポイントは借金の金額ではなく、本当に支払いが不可能な状態であるかによります。
この判断基準ですが、生活保護受給者は生活保護受給段階で支払い能力がないことが証明されているため、借金が少額であったとしても自己破産ができると考えて良いでしょう。
生活保護受給者の自己破産におけるデメリット
生活保護受給者の自己破産は、借金を相殺できるという大きなメリットがあります。しかし、反対にデメリットもありますので慎重に検討する必要があります。
2度目の自己破産はできない
通常、生活保護の受給有無に関わらず、自己破産は2回目が簡単にできる制度ではありません。1度自己破産をすれば、次の自己破産の免責まで7年は間を空ける必要があります。
7年後はすぐに自己破産が出来るかと言うとそういうわけではなく、審査が通らずに自己破産が許可されないというケースも多くあります。
生活保護受給者の場合、自己破産で借金を精算したあとに再び新しい借金を作ってしまうと、福祉事務所に生活保護を停止されてしまう可能性もあります。
そうなると、借金だけが残り返済のあてもなければ財産もなく、生活がままならないといったような最悪の状態になってしまいます。
生活保護は最低限の生活を保証するものなので、額の少なさに不満を持ち借金をしてしまう受給者もいますが、後先のことを考えればデメリットでしかありません。
新規のクレジットカード発行・借り入れは不可
自己破産者は信用情報機関のブラックリストに載るため、5年~10年は新規でクレジットカードを発行したり、借り入れはできません。
生活保護受給の条件は収入がないと認められることなので、生活保護受給者の場合はそもそもクレジットカードの審査に通らないでしょう。
生活保護を受給している間は、借り入れやクレジットカードの発行は出来ないので、自己破産のデメリットと言うよりは、生活保護受給のための条件というふうに捉えておきましょう。
財産はすべて没収
自己破産では、必要最低限の財産以外はすべて没収されてしまいます。
ただし、生活保護受給の段階ですでにメインの財産は手元に残っていない状態であることが条件なので、こちらも自己破産のデメリットと言うよりは生活保護受給のための条件の一つです。
生活保護受給者が自己破産をする際にかかる費用
通常、自己破産にかかる費用には以下のようなものがあります。
項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
収入印紙代 | 1,500円 | 破産手続きの手数料(免責申立費など) |
郵便切手代 | 3,000円~15,000円 | 借入社数によって変動 |
官報掲載費 | 10,000円~15,000円 | 官報に掲載される費用 |
予納金 | 0円 | 同時廃止事件の場合 |
20万~30万円 | 少額管財事件の場合 | |
50万~70万 | 管財事件の場合(レアケース) |
弁護士費用としては、着手金や成功報酬(報酬金)がかかり、この弁護士費用だけで50万円前後がかかってしまいます。
さらに裁判所への費用として、印紙代(申立手数料)や郵便切手代、予納金なども合わせると、とても生活保護受給者が支払えるような金額ではありません。
では、生活保護受給者は自己破産をすることが難しいのかと言うとそうではありません。
経済的余裕がない人のための法的支援機関である法テラス(日本司法支援センター)を利用することで、生活保護を受給していても自己破産が可能になります。
具体的には、法テラスを利用することで立替払いが可能になりますが、法テラスへの返済は無期限猶予つきで、予納金も立替払いしてもらうことができます。
生活保護受給者に対しての特別措置として、弁護士費用や予納金の支払いをせずに自己破産することができますので、自己破産の手続きをする際のお金の心配はする必要がありません。
まとめ
借金を返済しながら生活保護を受給することは出来ないため、借金を抱えている場合は、生活保護の申請より前に債務整理を行うべきです。
その他にも、生活保護を受けながら不要な心配をする必要もなくなり、しっかりと生活を立て直すことに専念することもできます。
もしも、借金を抱えながら生活保護の受給を検討しているのであれば、まずは一度弁護士に相談し、どのような債務整理の選択肢があるか、最適な方法を提案してもらうようにしましょう。
状況によっては、自己破産をすることが最善ではない場合や生活保護の受給が出来ない可能性もあります。
自己判断で行動することはさらなる生活苦を招く可能性がありますので、専門家の意見を取り入れながら最適な策を取ることが重要です。
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